甘いヒミツは恋の罠
「皆本さんが毎日仕事が終わった後、店長室に行ってるのも気になってました。それに、見ちゃったんです……店長とキスしてるところ……」


「厳密に言うと未遂だったけどな。ドアを開けっ放しだったのは迂闊だったと思うが……それがお前にどう関係ある?」


「……なにもかもうまくいってるくせに、朝比奈店長まで取られるなんて……羨ましくて、嫌だったんです」


 結衣が両手で顔を覆う。小刻みに肩を震わせて切れ切れに嗚咽をこぼした。


「自分で汚い事をしているって自覚はあります。皆本さんとは、いいライバルになれそうな気がしたんですけど……自分の中の小さな嫉妬がそうはさせてくれなかった……ごめんなさい」


 ミーティングが始まる前、結衣が作成したという資料を目にした瞬間、嫌な予感がした。そして、その資料の作成日の日付が昨日のものだとうことに気づくと、朝比奈は結衣に対して不信感を覚えた。


「謝罪は直接あいつに言うんだな。資料室の鍵はどこだ?」


「あ、あの――」


「いいから早くよこせ!」


 震える手で差し出される資料室の鍵をひったくると、朝比奈は結衣の呼びかけに返事をすることなく足早に部屋から出て行った。
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