甘いヒミツは恋の罠
（思い出すだけでも馬鹿にされたみたいでムカつく～！）


　紅美は、もわもわと浮かんできたニヤリと笑う朝比奈の顔を、ブンブンと頭を振って蹴散らした。


（とにかく仕事に集中しなきゃ……）


　紅美が今まで勤務していた御宿支店は、若い女性が多く働くビジネス街だった。


　支店によってその地域に見合ったデザインや価格で商品を提供していたため、御宿支店のアクセサリーデザインはリーズナブルで、可愛らしいフェミニンなものが多かった。しかし、本店のサロンを回ってみると、御宿支店に置いてあったものと同じものもあったが、やはり本店の要であるルチアシリーズが特に目立っていた。


　このシリーズのアクセサリーは、本店にしかなく通販もしていないため、わざわざ遠方から足を運んでくる客も少なくはない。一切、石を使わず純度の高いシルバーとデザイン性のある作りがリチアシリーズの特徴だ。


　紅美は本店の雰囲気とアクセサリーの傾向をまず把握するべく、手いっぱいに資料をかき集めて下調べをすることにした。


（さ、戻って仕事しよ）


　紅美は、颯爽とベンチから立ち上がると拳を握って気合いを入れた。
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表紙・目次

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