短編集
黒板には今日も、子供っぽい字の新しいメッセージが書かれていた。
『夢に言いたいことがある。
明日言う。今日はムリ。心臓壊れそう。』
また“夢”と呼び捨てにしてる……
相変わらず生意気な年下くんのメッセージに、口を尖らせてから、すぐに笑みを浮かべた。
階段を見た。
靴跡はまだ濡れている。
下りてくる足跡は、ついていない。
ということは……
男の子は上の階にいるということ。
足跡を残しては見付かってしまうのに、隠れているつもりらしい。
メッセージはいつも生意気だけど、隠れる行為が年下らしく、可愛く思えた。
階段を上り、驚かせてみようかと考えた。
一段二段上って、思い直してやめた。
顔が分からないからこそ、恥ずかしがらず何でも話せていいのかも。
そう思ったのは昨日のこと。
それに、彼は私に正体を明かしたくないみたいだから。
私に見付かって、もう黒板に来てくれなくなるのは淋しい。