短編集
首を捻って少し考え、こう推測した。
メッセージを残した男の子は、
私の下の階に住んでいた、12歳の春香ちゃんが好きだったのではないかと。
春香ちゃんも当然引っ越して、ここにはいない。
進学先の中学も変えなくてはいけなくなり、引っ越しの日は泣いていた。
春香ちゃんだけじゃなく、このメッセージを書いた男の子も、きっとどこかで泣いていたのではないかと思った。
男の子の気持ちが良く分かる。
『これで最後なのに告白できなかった。俺のバカ』
その後悔の気持ちは私と同じで、
切なく悲しいけど、仲間ができた気持ちで、少しだけ嬉しく思った。
男の子が書いた白いメッセージの下に、
私もピンクのチョークで書き込んだ。
『私も君と一緒。好きと言えなくて後悔してる。同じだね』