冷たい上司の温め方
「あれっ?」
全速力で走る私の横を、自転車の女の人が颯爽と駆け抜けていく。
そしてその人の後ろから、男の子が小さな自転車の車輪を必死に回して着いていく。
だけど、人をよけようとしてバランスを崩して……。
危ない!
「わっ!」
「痛いよー」
派手に転んだ男の子が大きな泣き声をあげ始めると、一瞬にして辺りがざわつきだした。
そして、泣きじゃくる男の子の下には……とっさにスライディングキャッチする形になった私。
しかも、大して役に立たなかったというオチつき。
「すっ、すみません」
慌てて飛んできたお母さんは、真っ青な顔をして私を見下ろす。
「大丈夫ですからっ。あのっ、息子さんを……」
お願いだから、下ろしてください。