冷たい上司の温め方

推定二十キロ近くある男の子が、私の体の上で遠慮なくのた打ち回るから、はっきり言って吐きそうだ。
おまけに、腕には彼の自転車がもろに当たって、そっと目をやるとスーツが破れている。

あぁぁ、お金ないのに……。


男の子を抱き上げたお母さんが、もう一度頭を下げる。

私はやっとのことで起き上がって、一番の笑顔を作って見せたけれど、きっとぎこちなかったに違いない。


だって……起き上がる時に見えてしまったのだ。

膝のあたりがビリビリに破れたストッキングと、思いきり擦りむいた膝頭。そして、出血。
他にも、かすり傷がいっぱいだ。

おまけに、派手にスライディングしたせいか、スカートは砂だらけ。

とても大人の女とは思えない酷さだ。


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