冷たい上司の温め方
銀縁のメガネをかけたその男は、見上げるほど背が高くて、少しネクタイを緩めた様が絵になっていた。
「酷い格好」
初対面の人にそんなことを言われて、なにかがブチッとはじける。
「私だって、なりたくてなったわけじゃないんです!」
「ふーん、自己主張は上出来」
そんな訳のわからない返事をされた私は、ちょっと不機嫌モード。
それでも時間がないことを思いだす。
再び駆けだそうとすると、今度は銀縁メガネが私の腕をつかんで止めた。
「ちょっと、急いでるんです。ナンパなら別の人をどうぞ」
時間がないの!
イライラが募っていたせいか、ちょっと強めの口調になってしまった。
「ナンパだって? 自分の姿わかってる? こんな女、誰が……」