冷たい上司の温め方
「こんな女で悪かったですね。
私は見た目で勝負してませんから、あしからず」
こうなったら、売り言葉に買い言葉だ。
「あっ、そう。じゃあ中身には自信があるっていうことだ」
口角をあげて笑う男に、返す言葉が見つからない。
中身……って、そんなの大したことないけど……。
「もう、なんなんですか! 失礼します」
手を振りほどいて再び駆けだそうとしたけれど、やっぱり引き留められて……。
「まぁ、ちょっと待て。お前、就活か?」
「そうです。だから急いでるんです!」
「でも、そんなカッコで行ったって、ドン引きだぞ」
その通りだ。
だけど、もうあとがない。
このままじゃ、田舎に帰らないといけなくなってしまう……。
「来い」
「は?」
「いいから、来い」