冷たい上司の温め方

「んー」


突然の唸り声に慌てて手をひっこめたけど、彼は眠ったままだ。

起こさないように気を付けて、脇に体温計を挟む。
みるみるうちに上がっていく体温は、やがて三十八度五分で止まった。


「ほら、ひどい熱じゃない」


解熱剤を飲ませてあげたい気もする。
だけど、眠っているのなら、そのままにしておいてあげたい。

時々顔をしかめる楠さんは、とても辛そうだった。

ひとり暮らしの時の病気って、本当に辛い。

食べないと元気にならないとわかっていたって、作る気にもなれないし、「辛い」と弱音を吐いても、誰かが手を差し伸べてくれるわけじゃない。

このまま帰ってしまおうかとも思ったけど、やっぱりできない。

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