冷たい上司の温め方
小さな頃、熱を出すたびに母の手を求めていたことを思い出したからだ。
私が手を握ると、楠さんは再び深い眠りに落ちていく。
こんな私でも、少しは訳に立てたかな?
そんなことを考えながら、ウトウトしてしまった。
ふと目を覚ますと、外が明るい。
リビングの遮光カーテンが開けられていて、太陽の光が降り注いでいる。
そして、ソファにもたれかかるように眠っていた私には、ブランケットが掛けられていた。
「楠さん?」
眠っていたはずの彼の姿がない。
慌ててキョロキョロするとバスルームからシャワーの音がする。
ブランケットをたたんでいると、楠さんがリビングに戻ってきた。
髪からはまだ水滴が滴り落ちている。
「おはようございます。あの、熱は?」
「あぁ、まだ少しあるようだが、もう大丈夫だ」
「よかった」