冷たい上司の温め方
結局なにをしたわけでもないけれど、一安心だ。
「帰ればよかったのに」
そんな言い方、あんまりじゃない!とムカついたけど、私の買ってきたスポーツ飲料を口にした彼は「悪かった、な」と口にした。
「いえ……」
なんだか弱々しい楠さんは、まだ体が辛いのだろう。
「座ってください」
私は彼の腕を引いて、無理矢理ソファに座らせた。
「はい」
テーブルの上にあった体温計を差し出すと、楠さんは素直に脇にはさむ。
「お前、眠れなかっただろう?」
「そんなこと、病人が気にすることじゃないですよ」
こんな時まで気を使わなくたっていい。
この人はいつもそうなのかもしれない。
しばらくして体温計のアラームが鳴り、楠さんは取り出した。