冷たい上司の温め方
部長は必死だ。
ここに呼ばれたということは、肩たたきされる可能性が高いのだから。
「いえ、加納部長には、社史編纂室に異動していただきます」
「社史編纂室?」
そんな部署、あったっけ?
「わが社は五年後に五十周年を迎えます。
そのため、大々的に社史を作る予定です。ですから社史編纂室を開きます。
加納部長にはそちらの室長として勤めていただきたい。
ただし、しばらくは部下をつける予定はありません」
室長、といっても、部下がいないなんていわゆる左遷だ。
営業部はクビだと宣告したようなもの。
そんなのあんまりだ。
奥さんが入院しているんじゃ、仕方ないと思うんだけど……。
部長は脱力して椅子に体を預けた。
戦力外通告を受けたのだ。
そのダメージは計り知れない。