冷たい上司の温め方
なにも言えなくなった部長を前に、楠さんが再び口を開く。
「社史編纂室は営業とは違い営業手当は付きません。
ですが、定時で帰っていただいても結構です」
部長はうなだれたまま頷いた。
「我が社の歴史を知るために、歴代活躍された方のところに取材に行ってもかまいません。
その場合、直行直帰も認めます。
その時は、申請していただければIDを通す必要はありません」
「えっ?」
部長の顔が変わった。
「加納部長。あなたの責任感は私達も認めています。
あなたには今しかできないことがあると思います」
楠さんは真っ直ぐに加納課長を見つめる。
『今しかできないこと』って……なんだろう。