冷たい上司の温め方

「ど、どこに行くんですか?」

「とりあえず、それをなんとかしてやる」


私の膝をチラッと見ながら、男は運転手にどこかの住所を告げる。

そして、おもむろにスーツの内ポケットからスマホを取り出して、電話をかけ始めた。


「はい。少し遅れます。
あと例の件、確保しましたので。――はい」


電話を切ると、それ以降なにもしゃべらなくなってしまった。


良く見ると、すごくきちんとした身なりをしている。

ピッタリ体のラインに合っているスーツは、きっとオーダーしたものだろう。
百八十センチくらいの身長、手足も長いこの人に、ぴったりのサイズだ。


淡いブルーのワイドスプレッドのシャツの襟元に、ネイビーのネクタイ。
大きい結び目はウインザーノットだろうか。


コーディネートは、悔しいけれどお洒落に決まっている。

< 17 / 457 >

この作品をシェア

pagetop