冷たい上司の温め方
「ど、どこに行くんですか?」
「とりあえず、それをなんとかしてやる」
私の膝をチラッと見ながら、男は運転手にどこかの住所を告げる。
そして、おもむろにスーツの内ポケットからスマホを取り出して、電話をかけ始めた。
「はい。少し遅れます。
あと例の件、確保しましたので。――はい」
電話を切ると、それ以降なにもしゃべらなくなってしまった。
良く見ると、すごくきちんとした身なりをしている。
ピッタリ体のラインに合っているスーツは、きっとオーダーしたものだろう。
百八十センチくらいの身長、手足も長いこの人に、ぴったりのサイズだ。
淡いブルーのワイドスプレッドのシャツの襟元に、ネイビーのネクタイ。
大きい結び目はウインザーノットだろうか。
コーディネートは、悔しいけれどお洒落に決まっている。