冷たい上司の温め方

「遠藤さん、こんにちは。なにか手伝えることありますか?」


休憩時間に地下に顔を出すと、遠藤さんも一息ついていた。


「ありがとう。
でも、気にしなくていいのよ。あなたはもうここの人じゃないんだし」


いつもと変わらずにこやかに笑う遠藤さんと言葉を交わすと、心が落ち着く。


「いいえ。遠藤さんから教えていただいたこと、すごく役に立ってます。
それに、ここに来ると自分のホームグラウンドに帰って来たみたいで落ち着きます」

「面白い子ね」


遠藤さんは「それじゃあ」と言いながら、モップの洗浄を私に任せてくれた。


「スーツ、汚れるから」と言いながら自分のエプロンを貸してくれる遠藤さんは、私のお母さんみたいだ。

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