冷たい上司の温め方
彼の言う通りソファに座り、膝に巻いてあったハンカチを取ると、思ったより広範囲にかすり傷ができていた。
「ガキだな」
フンと鼻で笑った彼は、おもむろに消毒液を取り出すと乱暴に傷にかける。
「痛い!」
「このくらい我慢しろ」
「だって、痛いんです!」
実に乱暴な手当は、その後も容赦なく続いた。
いくらなんでも、もう少し優しくできるでしょ!
「ほら、そっちの手も出せ」
「えっ?」
「鈍感だな、お前」
彼に言われた通り、ジャケットが破れてしまった方の左手を差し出すと、手のひらに切り傷がある。
きっと小さな石の上に手をついてしまったのだろう。
だけど、足のかすり傷が酷くてヒリヒリしていたから、手の痛さなんて感じていなかった。