冷たい上司の温め方
「調子に乗るな。あのランチは四百五十円だろ」
「気にしない」
楠さんとの約束にワクワクした。
この人は、知れば知るほど魅力的な人だ。
もっと素の彼を見てみたい。
食堂であんなにへこんだのに、楠さんと話しているうちに元気が出た。
前向きだけが取り柄だもの。
頑張らなきゃ。
それに……楠さんに『うちの新人は優秀ですが』って言ってもらえた。
もしかしたら、口からでまかせというヤツだったのかもしれないけど、前向きに生きるには、良い方に考えないと。
シモベはシモベなりに頑張って、少しでも楠さんと笹川さんをサポートできればいい。
楠さんと人事に戻ると、私の前を山際さんが横切った。
この人……。
一言文句を言ってやりたい。
だけど、私より先に口を開いたのは楠さんだった。