冷たい上司の温め方

それに、不貞腐れたような顔で、楠さんをにらんでいた前回とは、飯田さんの顔が違う。


「早速ですが、前回のお話の続きです。
私としましては、飯田さんに納得していただきたい」


楠さんが一方的にクビを宣告するのではなく、こうして面接の時間を持つのは、大切なことだからきちんと話し合いたいという気持ちも強い。

会社の都合のリストラでは、退職金の上乗せについて話したり、退職に「うん」と言わない人を精神的に追い詰めるなどの手法をとると聞いたことがあるけれど、それとは全く違った。


「今日遅れたのは……」


飯田さんは楠さんの質問に対する答えとは別のことを話し出した。


「ひとつ大口の契約を取り付けてきたからです」


えっ?
リストラだと言われている飯田さんが、どうして、そんな?
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