冷たい上司の温め方

私は……どうしたらいいのだろう。

林常務は私のことを気に入ったはずだ。
もう一度あの店に行けば、もっと詳しい情報を聞きだせるかもしれない。
そうすれば、楠さんの手伝いができる。

でも……。


「麻田」

「は、はい」

「すまないが、一課の手伝いに入ってくれ。
会社説明会の資料作りが間に合わない」


楠さんは、いつもの調子で私に指示を出す。


「わかりました」


笹川さんが私をチラッと見つめた後、心配そうに顔をゆがめた。


その日は、そのまま一課の仕事に従事した。

もう来年度の内定は出ている。
だけど、二次募集をかけるのだ。

他社を希望していて不採用だった人の中に残る優秀な新人を確保するためにおこなっているらしい。

入社して半年。
去年は私も全く内定が出なくて焦っていた頃だ。

そして、楠さんに出会って、どうしてかここにいる。

< 305 / 457 >

この作品をシェア

pagetop