冷たい上司の温め方
「麻田さん、三課きついでしょ」
会議室で一緒に資料の袋詰め作業をしていた一課の先輩の朝日さんが、私に声をかけてくれた。
「いえ。全然役に立っていませんが、やりがいはあります」
「根性あるね」
根性がある、という訳ではない。
だけど、楠さんと同じように、正しいことは正しいと言える人間でいたいと強く思うようになった。
そして、三課の仕事がどれだけ大切なのかわかるようになってきた。
「ごめん。ちょっと呼ばれてるから、あとはお願いしてもいいかな。
お昼になったら休憩とってもいいからね」
「わかりました」
内線で呼ばれた朝日さんは、大量の資料を残して、会議室を出て行った。
それからは、単純作業に没頭した。
三百あった資料の四分の一くらいが終わったころ、時計が十二時を差した。