冷たい上司の温め方
「なにがあろうと、絶対に動揺することはなかったあの人が、麻田さんのことに関しては、いつもオロオロしているように見えた。
君を他の課に行かせているときは、全く仕事が手についてなかった」
「まさか……」
笹川さんは私の目を見つめると、首を横に振った。
「心配でたまらなかったんだと思う。君の、ことが。
おそらく、男、として」
笹川さんから視線をそらせない。
確信を持ったような言い方だ。でも……。
「違いますよ。上司だから……」
もしそうだったとしても、上司だからだ。
「仕事上の付き合いだけなら、あの人はあんな顔しない。
俺……ずっと楠さんのこと尊敬してついてきたんだ。見ていればわかる」
笹川さんの目は真剣だ。
「だけどそれも……今朝、までだけどな」