冷たい上司の温め方
「俺じゃダメかな?」
「えっ?」
「俺が麻田さんを守りたい。
同僚じゃなくて、麻田さんの特別なひとりに……」
『特別なひとり』というのは、彼氏ということだろう。
「あっ、あの……」
なんと返事をしたらいいのかわからない。
笹川さんは素敵な人だし、一緒にいて楽しい。
仕事だってできるし、非の打ちどころのない人だ。
だけど……。
「ごめん。俺、急ぎ過ぎだよね。返事は待つよ。
とにかく、俺の気持ちは伝えたかった。食べよ」
それからなんとかランチを胃に流し込んで、会社に戻った。
午後からも私は一課の手伝いだった。
いつもの調子に戻った笹川さんは、人事に戻って行ったけど、楠さんとふたりの光景を思い浮かべると溜息が出そうだ。