冷たい上司の温め方

残っていた資料の袋詰めに取り掛かると、頭に浮かんだのは、笹川さんでなく、楠さんだ。

林常務のことを知って、腹を立てた。
だけとそれよりも、楠さんのお父さんの話を聞いて、彼が正義を貫きたいと思う気持ちに、同調している自分がいる。


それから二時間ほどして、一課の朝日さんが顔を出した。


「ごめんね。ひとりでやらせちゃって」

「いえ。もうできますから」

「流石、楠さんの自慢の部下だね。
この間、山際さんに同じようなこと頼んだら、就業時間内に半分しか終わらなかったよ」


朝日さんは私の向かいに座ると、あとわずかになった資料を封筒に入れ始めた。


優雅にゆったりと袋詰めしている山際さんの姿が目に浮かんだけど、私は本当に、楠さんの自慢の部下なんだろうか。

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