冷たい上司の温め方
「もしもし」
『もしもし、今、家か?』
「まだです。もうすぐつきます」
『三十分後に迎えに行く』
「はっ? どうし……」
楠さんは言いたいことだけ言って、電話を切った。
『迎えにいく』って、どういうこと?
楠さんと会って、なんと言ったらいいのだろう。
頭が真っ白になったけど、彼が来るというからには、時間前に来るだろう。
家に帰ってソワソワしながら、楠さんの到着を待った。
楠さんがやってきたのは、予想通り約束の五分前だった。
窓から彼の車が見えると、二階の部屋から下りた。
「楠さん、どうしたんですか?」
彼はまだシャツにネクタイ姿だ。
会社から帰って、そのまま来たのだろう。
「話がある。乗れ」
私を乗せた彼の車は、ふたりで行った公園の駐車場に向かった。