冷たい上司の温め方
「お疲れ様です」
朝日さんが言った通り、なんだか雰囲気がピリピリしている。
「麻田、お疲れ。もう今日は上がっていいぞ」
楠さんは書類から目を離すことなくつぶやいた。
「はい。それでは」
いつもならふたりの仕事を手伝うけれど、今日は逃げ出したかった。
ふたりのことは気になったけど、私がどうにかできることではない。
林常務のことは、まだ現在進行形だ。
おそらく別の仕事をこなしつつ、裏で動いているだろう。
会社を出ると、ホッとした。
だけど……明日からまた通常通り三課の業務だ。
どうしたらいいのだろう。
三十分ほど電車に揺られたあと、家までの道を歩いていると、バッグの中でスマホが震えた。
楠さんからだ。