冷たい上司の温め方
だけど、あっけなく楠さんに腕をつかまれて止められてしまった。
「待て。お前、その膝……」
楠さんに言われて自分の膝に目をやると、初めて出会った時のようにすりむいて血が出ている。
痛かったけど、ここまでとは。
「大丈夫です。それでは」
「じゃねーだろ。その足で電車に乗るつもりか。来い」
私の腕を半ば無理やりつかんだ彼は、エントランスでオートロックを解除すると、今降りたばかりのエレベーターに乗り込んだ。
あぁ、これじゃあ、出会った時と同じだ。
膝から血を流すなんて、まるでやんちゃな子供。
黙ったまま私の腕をつかんだ彼は、その手を離そうとしない。
楠さんの部屋に入ると、あの時と同じようにシンプルなリビングに連れて行かれる。
「座れ」
ソファに私を座らせた彼は、隣の部屋から救急箱を持ってきた。