冷たい上司の温め方
聡子はそこまで話すと、「はぁっ」と盛大な溜息を洩らした。
「最近、忙しくされてるでしょ?と言われて、思わずうなずいちゃった。
父、通常業務に加えて、大きなプロジェクトを立ち上げたところだったの。
それで一気に出張も増えていたし、残業だって毎日のようにあって。
だけど、どうもライバル社が、父の会社の動きを察知して、情報収集してたみたいで……」
「まさか!」
まさか、聡子を通してなにかを知ろうとしたとか?
「私……小鳥遊(たかなし)なんてちょっと変わった名字でしょ?
だから調べられちゃったみたい」
大きな溜息をついた聡子は、泣きそうだった。
「面接で、私の話なんて全然聞こうとしないの。
それなのに、父の話ばかりするからおかしいと気がついて、それからは知りませんって通したんだけど……」