冷たい上司の温め方
いつも明るい聡子の顔が曇った。
「私……そんなことにしか価値のない人間なんだって、よくわかった」
「そんなことない!」
思わず大きな声が出た。
「私だって就活して、嫌なこといっぱいあったの。だから、たまたまだよ」
精一杯励ましたけど、聡子は首を横に振るばかりだった。
「ううん。美帆乃達の話を聞いてたから、さほど苦労もせず面接に呼ばれて舞い上がってたんだよ。
私だってやればできるなんて、勘違いも甚だしいね」
こんなに悲しそうな聡子を初めて見た。
どうして、こんなことで苦しまなければならないの?
「違うよ、聡子」
「そうなんだよ。
それに……知らなかったとはいえ、父の会社のライバル会社を受けに行くなんて、自分から餌になりに行ったようなものなの」