冷たい上司の温め方
「笹川……」
楠さんは高そうなソファで林常務と対峙していた。
「麻田も来たのか」
眉をひそめた楠さんは、とても険しい顔をしている。
「君!」
私に気が付いた常務は、大きな声を上げる。
今更気が付いても、遅いわよ。
「人事三課の麻田です。その節はどうも」
「お前達、はめたのか? まさか女の方もうちの社の……」
「いいえ。私はお食事に行っただけです」
言い逃れできまい。
「常務、あちらの会社の女性に惑わされていらっしゃるとか?」
さっき秘書達が話していたことを口にすると、楠さんが口を開いた。
「それは違うな。惑わされてるのは、そちらの竹中さんの方だ」
楠さんはメガネのフレームを直すと、竹中をにらんだ。
「私はなにも……」
「先々週の水曜。東条電機の社長秘書とレストランで食事。
そのあと、ふたりでホテルに宿泊。先週の月曜にも……」