冷たい上司の温め方

「笹川……」


楠さんは高そうなソファで林常務と対峙していた。


「麻田も来たのか」


眉をひそめた楠さんは、とても険しい顔をしている。


「君!」


私に気が付いた常務は、大きな声を上げる。
今更気が付いても、遅いわよ。


「人事三課の麻田です。その節はどうも」

「お前達、はめたのか? まさか女の方もうちの社の……」

「いいえ。私はお食事に行っただけです」


言い逃れできまい。


「常務、あちらの会社の女性に惑わされていらっしゃるとか?」


さっき秘書達が話していたことを口にすると、楠さんが口を開いた。


「それは違うな。惑わされてるのは、そちらの竹中さんの方だ」


楠さんはメガネのフレームを直すと、竹中をにらんだ。


「私はなにも……」

「先々週の水曜。東条電機の社長秘書とレストランで食事。
そのあと、ふたりでホテルに宿泊。先週の月曜にも……」

< 376 / 457 >

この作品をシェア

pagetop