冷たい上司の温め方
確かに聡子は、お嬢様だから世間知らずのところはあるし、危なっかしいところもある。
だけど、とっても優しい子なのに。
「私、その人に会ってくる!」
「ちょっと、美帆乃。落ち着いてよ」
「だって、このままなんて許せない」
思わず立ち上がった私の肩を、聡子は押さえた。
「美帆乃、ありがと。
でも、今回の事は勉強だったと思うことにする。
それに……私が動いてまた父に迷惑がかかるのは嫌なの」
珍しく意気消沈する彼女に唖然とする。
社会って、そんなところなんだ。
私達みたいな若造が正論を吠えたところで、びくともしない。
それどころか、それによって不利益を被る人が出てしまうなんて。
動くことすらできないじゃない。
「なんか怖くなっちゃった」
彼女がそう言うのには頷ける。
危うく利用されるところだったのだから。