冷たい上司の温め方

「先ほど、おふたりの今後は険しいと申し上げましたが……公益通報者保護法は、あってないようなもの。
別の理由をつけて、辞めさせられるのが現実でしょう」

そんな……。
だけど、菅原さんの言う通りかもしれない。

明らかに常務と竹中が悪い。
だけど、残念ながら権力を持っているのは常務の方だ。


「ですが、たとえダイオー電機にいられなくなっても、社会的に抹殺されるのは、私達の望むところではありません。
おふたりの個人情報は、確実に守るとお約束します」


『社会的に抹殺』という言葉にビクッと震える。
楠さんに大きな口を叩いておきながら、途端に怖くなったのだ。

いくら正しいことをしても、“会社を裏切り、告発した人物”というレッテルは、今後の就職に影響を与えるだろう。
一旦はなにもかも覚悟したはずなのに、足が震える。


「すぐに記者を総動員して、明日の朝刊に間に合わせます」


菅原さんは早速重そうなバッグを持ち立ち上がった。
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