冷たい上司の温め方

「おふたりの行動には頭が下がります。
正しいことが報われない世の中を変えるのがマスコミの仕事です。
おふたりがこの先、必ず成功されると信じています」


菅原さんの力強い励ましに、勇気をもらえた気がした。

菅原さんが出て行ってしまうと、緊張の糸が切れ茫然としてしまう。
頭の中が真っ白になり、なにも考えられない。


「美帆乃」


その時、私の横で菅原さんを見送った楠さんが、突然私の腰を抱いた。

そして、彼は私の顎に手をかけ……ゆっくり唇を重ねる。


あの時、してくれなかったキス。
不意打ちすぎて驚いたけど、彼の唇は温かかった。


「どうやらお前のことを諦められないようだ」


苦笑する楠さんは私を強く抱きしめる。


「楠、さん……」


私も好き。
ちょっと冷たくあしらわれたからって、あなたのことを諦められない。


「なにがあっても、お前のことは、俺が守る」

「……はい」

「好きだ」


目頭が熱くなる。
彼は一番欲しい言葉をくれた。
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