冷たい上司の温め方

それからすぐに人事に戻った。


予想通り、人事は大変なことになっていて……。
部長のデスクの前で真っ赤な顔をしている笹川さんと、ふたりを呆然と見つめる課員と……異様な空気が漂っていた。


「部長」


その空気を切り裂くように入っていった楠さんは、メガネのフレームを上げながらキリリとした顔をする。


「ご迷惑をおかけしました」


深く頭を下げた楠さんに、部長はなにも言えないでいる。


「笹川、ありがとう」


ここで一番冷静なのは、当事者の楠さんだ。


「楠、お前……」

「私は常務の不正を告発しました。
明日にはトップニュースになっているはずです」


晴れ晴れとした顔の楠さんを、誇りに思う。
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