冷たい上司の温め方
ふたりで人事に戻ると、笹川さんがまだ残っていた。
「楠さん、お話があります」
神妙な面持ちの笹川さんに、楠さんは頷いた。
まだ数人が残っているフロアでは話しにくい。
私達はいつも使っている会議室に向かった。
「笹川、麻田……すまなかった」
会議室に入るとすぐ、楠さんが深々と頭を下げるから驚いた。
「許しませんよ」
楠さんの前に立ち、唇を噛みしめた笹川さんが、声を荒げる。
「ひとりでなんとかしようなんて、なに考えてるんですか。
俺はなんのために楠さんについてきたと思ってるんですか!」
「笹川……」
「楠さんの正義感に惚れてここまで来ました。
苦労もあったけど、イヤじゃなかった。
それなのに、最後のお手柄はひとりじめなんて、許せない」