冷たい上司の温め方

それは私も同じ気持ちだ。
正確には“手柄”ではなく、“責任”だけど。

もちろん笹川さんもわかって言っているのだろう。


「ひとつだけ教えてください」


笹川さんはそう言うと、少し後ろにいた私の顔を見てから、口を開いた。


「麻田さんのこと、ホントはどう思ってるんですか?」

「えっ……」


私?  
さっきキスを交わしたばかりの唇が、途端に熱を帯びてくる。

楠さんは、なんと言うのだろう。


「好きだ」

「キャッ!」


楠さんが『好きだ』と言った瞬間、視界から消えた。
笹川さんが彼を思いきり殴ったのだ。

倒れた楠さんは、口内を切ってしまったのか、唇に血が付いている。

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