冷たい上司の温め方
「……クビになりそうな俺が、言えることじゃないけどな」
自嘲気味に彼は笑ったけれど、たとえこの先どんな苦労があろうとも、彼についていきたい。
それに……楠さんはどんなに苦労しても、お父さんとお母さんと家族として生活したかったのかもしれないと感じた。
彼にしがみついて温もりを貪る。
あんなに冷たかった楠さんが、今は温かく感じる。
「楠さん」
「なんだ?」
「私、あなたのそばにいたい」
本当は「好き」とストレートに言いたかったのに、どうも照れくさくて言えない。
「離さないから覚悟しろ」
「……はい」
彼からそっと離れて、腫れている頬に手を伸ばす。
「冷やさなくちゃ」
「そうだな」
口角をあげて微笑んでみせた彼は、不意に私にキスをした。