冷たい上司の温め方
なかなか泣き止むことができない私を、楠さんは優しく抱き寄せた。
会社でこんな……と思わなかったわけじゃない。
だけど、今は許してほしい。
――トントン
突然のノックに驚いて楠さんから慌てて離れる。
楠さんもまた、キリリとした顔つきに戻った。
「失礼します」
ドアの向こうから現れたのは笹川さんだった。
「麻田さんが見当たらないと思ったら、やっぱりここだ。
会社でキスなんてしたら、クビですからね」
「お前に見つからなきゃいいだろ」
「ちょっと、楠さん!」
とんでもない発言をする楠さんに慌て、思わず声をあげると、「フッ」と笑いながら私にハンカチを差し出してくれた。
「いつの間に用意したんだ」
「あぁ、アレですか。
昨日帰ってから残業しましたよ。残業代いただけます?」
ふたりがなにを話しているのか、さっぱりわからない。