冷たい上司の温め方

「ちょっと、来い」


楠さんはメガネのフレームに触れると、身を翻して歩いていく。
私も遅れまいと続くと、いつも使っている会議室に入った。


「あのっ!」

「笹川にやられた。まさかアイツ……」


笹川さん? 一体、どういうこと?


「今まで通りだ。ここで働けるらしい」

「ホント、に?」

「当然、笹川もお前も、今まで通りだ」


勝手に涙が溢れてきた。
正義のヒーローは、やっぱり負けなかったのだ。

口を押えて声を押し殺す。
感情が一気に溢れてきて自分では抑えられない。


彼はお父さんとは同じ轍を踏まなかった。
きっと天国のお父さんも、喜んでくれているはずだ。


「美帆乃」


楠さんが優しく私の名を呼んだ。


「ありがとう。心配してくれて」

「当たり前、です……」


あなたの彼女なんだから。
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