冷たい上司の温め方

ヘトヘトになった体で大学に顔を出すと、あれからしばらく休んでいた聡子がゼミに出ていた。


「聡子、もう大丈夫?」

「うん。美帆乃、心配かけてごめんね」


皆、卒論の中間提出日が迫っていて、目が真剣だ。

ここで一度チェックされて駄目だと突き返される。
そうすると、最悪、最初から練り直しということもある。


経済や経営学部はレポートで済むゼミもあるらしい。
だけど文学部は卒論こそ集大成だと思っている教授が多くて、免除になることなんて、まずない。


「落ち込んでいられないわよ。
去年、中間で三人落とされたんだって。その人達はそのまま留年」

「やっぱりその噂、本当なんだ」


毎年留年は何人か出るけど、卒論だけが不合格で卒業できなかった人がいたと噂になっていた。


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