冷たい上司の温め方
卒業できないのは困る。
これ以上学費を払えないし、就職だって決まったのだから。
「私、お父さんの会社で事務をさせてもらおうと思う」
「えっ?」
聡子は、自分の卒論をパラパラめくりながら、淡々とつぶやく。
「親の七光りって言われたらそうだし、甘えてるって言われたらそれも認める。
でも、やっぱり社会に揉まれて苦労もしなくちゃと思う。
お母さんは仕事が決まらないなら家にいればいいって言ってくれるけど、美帆乃を見ていてそれじゃあ駄目だなと思って」
突然の聡子の告白に驚きすぎて、言葉が出てこない。
おまけに短期間でグーンと成長した聡子に、負けた気さえする。
「えーっ? いや、いらない苦労なんてしなくていいよ。
聡子はその真っ直ぐな性格が魅力なんだから、別に世の中の汚いところなんて見なくたって」