SHIZUKU ~ 透明な朝露に抱かれて ~
『しずく、楽しいか?』


永井さんが去って、2人きりになった時、俺は君に聞いた。



『楽しいよ。とっても。』


君は、花が咲きほこるように、幸せそうに笑う。

そして、言う。



『こんなに楽しくて、幸せでいいのかな?って思う。

世界のどこかには、今も苦しんでいる人や、物や、神様がいるかもしれないのに。』



『いいんだよ。しずく。

楽しくなっても、幸せになっても。

しずくが幸せなら、ここにいる人達は幸せだよ。

少なくとも今はね。

喜びは広がるんだ。

今日楽しんで帰った人達は、その家族や友達を喜ばせることができる。

広がるんだよ、幸せが。』



『羨ましい思う人がいるかもしれない。

辛くて苦しい人や者や神様が。』



『しずく、そう言って苦しんでいたら、俺たちも苦しくなる。

皆が苦しくなってしまう。

それは違うだろう?

前向きに考えるんだ。

羨ましがっている物達は、愛の素晴らしさを学ぶだろう。

そして、愛したいと願うだろう。

いつか、愛する事を知るだろう。

歓びを知るだろう。

そんな日が来るって信じよう、しずく。』



俺がそう言うと、君は『そうだね。』と笑った。


< 34 / 40 >

この作品をシェア

pagetop