それでもキミをあきらめない




でも、中学三年間、夢中で張り続けていたバリアは、知らないあいだに厚みを増して、内側からでは破れない、頑丈な殻をつくりだしていた。

握りこぶしで強く叩いても、ヒビひとつ入らない、鉄の卵みたいに。

内側からは、どうやっても生まれることができない。


おまけに無理して入った学校では、勉強についていけず、落ちこぼれる始末だ。

あたらしく生まれることができず、地味で暗くて勉強もできないわたしは、教室の隅で目立たないように呼吸をして、静かに高校生活をやりすごすことだけに全力を注いでいた。
 

そんな味気ない生活の中で、唯一の楽しみが、高槻くんを目で追うことだったのだ。
 


教材を抱えたまま、転がったペンケースを拾うために身をかがめたとき、男子の脚が目に入った。
 
黒のチェックが入ったグレーのスラックスはとても長く、同じように長い腕が伸びて、わたしのペンケースを拾い上げた。
 
黙ってそれをわたしに差し出す彼を見て、心臓が止まるかと思った。
 
高槻くんは、いつまでもペンケースを受け取らないわたしを、無表情な顔のまま見つめた。
 
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