それでもキミをあきらめない
わたしは自分が幽霊なんじゃないかと思うことがあった。
朝子とだけ話す、朝子にしか見えない、一年生の亡霊。
それが嫌だったわけじゃなくて、むしろ、存在の薄さが心地よかった。
誰もわたしに気づかない。誰にも見えてない。
それはとても自由なことのように思えていた。
それなのに、高槻くんは……
よりによって、高槻くんが。
わたしの存在に、気づいた。
両手がふさがっていたわたしは、黙って彼を見つめることしかできなかった。
あまりにも驚いて、お礼のことばも出てこなかった。
高槻くんは結局、生物の教科書の上にわたしのペンケースを置くと、そのまま通り過ぎて行った。