それでもキミをあきらめない



静かで、優しい微笑み。


他の人にとってはごく些細な表情の変化にすぎなくても、

無表情な彼にとってはとても大きな感情表現だということに、

わたしもようやく気が付いていた。


「高槻くんは、兄弟いるの?」

「俺は、年の離れた弟が」


そこまで言うと高槻くんは突然尻ポケットに手を伸ばしてケータイを取り出した。

電話が来ているらしく、彼の大きな手の中でヴーっと低く唸っている。


「ごめん」


わたしにわざわざ断ってから、ケータイを耳に当てる。


「はい、高槻です」


いつもより硬い声でそう言ったかと思うと、彼の顔がさっと青ざめた。



< 128 / 298 >

この作品をシェア

pagetop