それでもキミをあきらめない
○。
一度も話をしたことのないクラスメイトの女子に声をかけられたのは、昼休みが終わる十分前のことだった。
朝子のとなりでお弁当箱を片付けていたわたしは、突然のことに驚いて返事もせずに固まった。
そんなわたしを不気味そうに見下ろし、彼女はドアのほうを指さした。
「呼んでる」
指の先を追って、わたしは目を疑った。
教室のうしろのドア枠に、もたれるようにして立っていたのは、高槻くんだった。
無言の背中に連れていかれたのは、ひと気のない校舎裏だ。
芝生のはげた地面は乾いていて、フェンスに添うようにして名前も知らない雑草が生い茂っている。
敷地の隅まで歩いていくと、彼は振り返った。
わたしを見て、わずかに眉をひそめる。
「……遠い」
いつものくせで木に隠れるようにして彼を見ていたわたしは、あわてて日陰から飛び出した。
心臓が、これまで経験したことがないくらい跳ねてる。