幸せにする刺客、幸せになる資格
午後になって、庭にビニールプールを用意して水を入れ、子供達が遊んだ。

『うちの方は近所のお友達も含めてここまで広い庭がないから、マリも貴重な体験だよ』
「庭が広くないって、本邸に行けばいくらでもそんな場所があるだろ」
『あんな場所で無邪気に遊べるか?』

確かに。
あまりに大きな日本家屋の建物に、毎日手入れされている日本庭園だった記憶がある。
そんな中で子供達が庭を踏みつぶせる遊びなんか出来る訳がないか。

『でも、庭が狭かろうが、俺は十分幸せだけどね』

健吾はそう言って子供達が遊んでいる様子を傍らで見守っている。

玲奈ちゃんの実家の裏に建てたというマイホーム。
都内ということもあり、広さは十分でないとは思う。
けど、幸せは家の広さで決まるものじゃない。

『僕も、十分過ぎる幸せを手に入れたよ、この場所で』

りんご園の可能性を探る仕事も楽しいし、子供達の笑顔や寝顔を見るのも癒される。

そして、亜香里との至福の時間。
りんご園の仕事のことも、家族のことも、何でも一番に相談し、かつ理解してもらえるのも亜香里だ。
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