幸せにする刺客、幸せになる資格
『お前、笑ってんじゃねぇよ。こっちの身になってみろ』
『ま、御曹司の宿命だね』
『そんなに俺をからかうなら、お前がおねだりしてるの、あげないよ』

"えー?"と膨れっ面をした玲奈ちゃん。

『それとこれとは話が別だよ』
『おねだりって、玲奈さんは何か欲しい物があるんですか?』

去年、すっかり声変わりをした大和が聞く。

『知りたいなら、大和くんのお父さんに聞いて?』

玲奈ちゃん、こっちに振らないでくれ。

他の子供達は、食べることと話すことに夢中。

仕方ない。
大和はダイニングに座っていたので、ソファーにいる僕の背後に呼び寄せ、耳打ちをした。

「玲奈ちゃんは子供を健吾におねだりしてるんだ」
『ふぅん、なるほどね。それは健吾さん次第だね』

中学3年にもなると、もう全てが分かっている年齢だろう。

『ちょっと、大和くんだけズルい。私も教えてよ』

亜香里が拗ねた。
それに大和が答えた。

『玲奈さんは、マリちゃんの弟か妹が欲しいんだって』
『マリ、妹がいい』

マリちゃんまで会話に参加してきた。

けどそうだよな。
大和のような表現をしておけば、子供達にも通じるんだよな。

大人は色々考えちゃうから、どうしても内緒話が最近増えて、どこまでを子供達に話してどこからがダメなのかの境界線の感覚が麻痺しているのかも知れない。
< 102 / 153 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop