幸せにする刺客、幸せになる資格
『琴乃とは、特に好きとか彼女とか、そんな関係じゃないんだ。ただ、目指す目標や夢が一致したから…一緒に頑張ろうと励まし合うと決めた同士のようなものなんだよ』
『その目標や夢って、何だよ』

ノリの質問に、大和くんが一瞬俯いた後、正面を向いた。

『俺、父さんと一緒にりんご園でりんごの栽培に携わりたいんだ』
『大和?』

大和くんの告白に、ノリは驚いた顔を隠せない。

『でも、ただ一緒にやるだけじゃない。これは中学の頃から考えていたことなんだけど、リンゴに関する専門知識を身に着いた上で、よりよい品質の果実を作りたい。だから俺、勉強をして公立の農業大学に行こうと思っているんだ』

大和くんの顔には、父親に対する決意表明と理解を求める説得力がある。

『琴乃も、まったく同じ進路を希望していて、2人で学んで来ようと思っている』
『彼女の、その先の進路はどうしようと思っているのかお前は知っているのか?』

ノリの質問は最もだ。
一緒にりんごを作りたいと言うのなら、ここで働くことになるけど、常勤で誰かを雇う余裕は、うちにはない。
そうなると・・・
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