幸せにする刺客、幸せになる資格
『私、早く大人になりたいです』
「どうして?」

琴乃ちゃんの言葉に、私が疑問を持った。

『早く、自分の判断だけで行動ができるようになりたいんです』

琴乃ちゃんは目の前にある私が作った料理を"美味しい"と言って貰えた後の会話。
私に向かって発言したことだけど、それに反応したのは大和くんだった。

『今の俺達の年齢で出来ることを最大限にやっていこう。一緒に…ひとつでも高いレベルを目指してさ』
『うん。でもこの間の中間テストは、大和にかなり差をつけられちゃったから、ちょっと自信ないな』

琴乃ちゃんはそう言うと少し俯いた。

『だから、一緒に勉強して、苦手なところは補い合おうって話して、お前も納得しただろ?』
『そうだよね』
「まだ1年生の中間テストでしょ。これからじゃない?」

私の言葉に、大和くんが"いやいや"と言うと、

『亜香里ちゃんは生まれ持った秀才だからそんな呑気なことが言えるんだよ。凡人の俺達の場合は努力が必要なの』

私って、そんな秀才かぁ?
確かに、うちの学校から緑山総合大学に現役で行くのは歴史上なかったみたいだけどね。

「そんな、私はそんな凄くないよ。東京行ったって、結局挫折してこっちに戻ってきてしまったのを、大和くんも知っているでしょ?」
『でも、勉強できる脳があるのはうらやましいよ』
「私は、夢のあるふたりが、うらやましいよ」
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