幸せにする刺客、幸せになる資格
紅葉さんと付き合っていたころのノリの年齢に大和くんは近づいている。
あの時は、友人にも、親にも言うことが出来なかった。

恋愛をオープンにできれば、きっと楽しい人生だってあったはずだ。

『父さんは後悔しているの?自分の人生の選択に』

不安そうに大和くんは聞く。

『いや、全く。お前が出来たのも当時においては計画的な強行突破だったから』
『計画的な強行突破?』

ノリの言葉に、大和くんも私も驚いた。
当時はまだ、高校生のノリが、計画的にのちに大和くんとなる子供を紅葉さんが妊娠したってこと?

『言葉の通りだよ。お前のお母さんが好きだった気持ちを誰にも明かす事が出来ないモヤモヤした思いが、僕達をそんな選択に導かせた。ただ、安西家の成金的考えによるアレルギーと、お前のお母さんの病気は完全な計算外で、あまりに幼稚な考えだったということを思い知ったけど、それでも父さんは後悔していないよ。なぜなら、大和は紅葉が残してくれた最高の贈り物だから』
「愛していたんでしょ、それだけ、紅葉さんのことを」

そんな選択が当時できた、ノリは凄いと思う。
どんなことを犠牲にしても、大和くんを守り抜いたエネルギーは、万人が出来るものではない。
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